空港のラウンジで座った席におかれていた雑誌を手に取ったところ、これが「私人飛機」、即ちプライベートジェットを専門に扱っている雑誌。中国は今後10年で現在の300機強から一気に1000~1200機程度にまでプライベートジェット・ビジネスジェットの市場が拡大するとされていて、仮にこうなるとアジアでは最も大きなビジネスジェット市場となることが予想されています。上海浦東、北京首都などで滑走路を眺めていても、確かに急速にビジネスジェットの利用が増えているなど感じますし、日本にも中国籍の機体の飛来が増えてきていますね。
日本の国土交通省の資料には、このようなデータもあります。
中国のビジネスジェット市場の拡大の可能性については、以下のようにいくつかポイントが指摘できると思います。
- 国土が広い - 改めて指摘するまでもなく、国土の広さはアメリカにみられるように、航空機産業にとっては重要なポテンシャルの要素です。
- 超富裕層の移動に、民間の定期便は必ずしも満足感が得られない - 中国国内の定期便は、管制・空港のスロットの問題や全体的なサービス品質の課題などから、大幅な遅延などが日本の感覚と比べるとかなり多くあります。超富裕層にとっては、チェックインから搭乗までに要する時間などはもちろんのこと、空港のセキュリティチェックなどのサービスレベルに対しても不満があるとの意見もあります。
- 中国は地方も含めて空港整備が進んでいる - 人口数十万規模の地方都市であればほぼ空港があるほか、北京でも北京首都だけでなく、北京市の南にある南苑空港など、複数の空港が存在しています。例えばこの南苑には一部の定期便が飛んでいますが、北京首都と比べて混雑しておらず、ビジネスジェットの利用にも適しています(最も、軍との共用の問題が常に残りますが)。
- 富裕層の「買い物」対象になっている - 高級マンション・高級車という「買い物」の次に出てくるものとしての航空機の存在が注目されつつあります。まさに上の雑誌はよい例でしょう。
- 中国企業だけでなく、グローバル企業も中国での経営活動が増加している - 実は中国人だけがターゲットではありません。中国にいるグローバル企業にとっても、国土が広さから、ビジネスジェットを求めるニーズが出てきています。
- 地方都市 to 地方都市のニーズ - 先に挙げた国土が広いこと、空港整備が進んでいることとも関連性がありますが、四級都市・五級都市クラスになると、地方都市 to 地方都市は決してフライトが網羅されているわけではありません。航空会社ごとにハブ空港もしくは第二ハブ空港を中心としたハブアンドスポーク式のフライトが多く、一度北京や上海・広州などを経由することになります。当然企業幹部にとって効率が良いわけではありません。
もう一つ。日本と違って、プロペラ機(小型単発機・双発機)中心の市場というよりも、初めからビジネス「ジェット」中心の市場として軽飛行機市場が形成されはじめていて、主要な空港でプロペラ機を見ることはこれもまたほとんどありません。書いていて気づきましたが、調布空港(東京)や八尾空港(大阪)でみるような光景に、今のところ中国で出会ったことがありません。
一方、良いことばかりではなく、課題もいくつかあると考えています。主だった点でいけば、
- パイロットの確保。特にビジネスジェットのパイロットとして、一定水準以上の経験を積んだパイロットの確保。中国国際航空などには外国人パイロットもいますが(実際にアメリカ人の機長と空港で話したことがあります)、中国国内のフライトが中心になることを考えると、中国は管制が中国語ですから、必然的に中国人ということになります。
- 機体整備の体制。ただでさえ民間旅客機は増え続けているなか、さらに一気にビジネスジェットが増えることになると、この整備体制を請け負うキャパシティも必要になります。
- ビジネスジェット用の格納庫、スポットなどの確保。特に格納庫は、主要空港ではこれ以上のスペースの確保は難しく、駐機スペースをどのように各都市で分散させるかもポイントになりそうです。
雑誌の中には、最近毎年開かれている北京国際商務航空展覧会の案内も。9月に北京の首都国際空港の敷地の一部にある中国民用航空飞行校验中心で開催されます。行けたら行きたいな・・・あ、平日か・・・。