今日の日経産業新聞の記事及びD2Cさんのプレスリリースで公表された上海自由貿易試験区でのD2Cさんと上海東方明珠による合弁会社の設立に関して、クララオンラインはD2Cのアドバイザーとして関与させていただきました。また、今日開かれたGMIC Tokyoの会場でのD2Cさんのセッションの中で、本件についてクララオンラインが関与させていただいたことについても、光栄にも触れて頂きました。
現在の日中の政治環境の中では、広くコンテンツ領域においても厳しい環境が続いており、例えば日本作品の映画の上映・地上波での放送が事実上認められない状態が続いています。一方で、全てが閉ざされているわけではありません。一例を挙げると、いま中国の動画サイト側からの日本のコンテンツの買付けについてはかなり積極的になっています。というのも、日本での中国の動画サイトのイメージといえば「海賊版が多い」という印象が強く固定化されていますが、この1-2年、一部のサイトを中心に、「むしろ正規のコンテンツを買いたい」「正規のコンテンツを買うことで、違法に配信している競合サイトとの差別化をはかりたい」という意識に変化してきています。もちろんこの背景には、動画サイト周辺における資金の巡りが良くなってきていることがあります。ただ、日本側からすると、きちんと海賊版の配信を止めた先でないと交渉できないわけであり、日本と中国の認識差の存在が、大きなビジネスに繋がっていないのです。
同時に、モバイルゲームについても急速に市場が拡大しています。ただ、こちらは日本でヒットするタイトルと、そのまま中国に持っていってヒットするタイトルは(ごく一部を除いて)かなり違いがあります。言語面のローカライズ、内容のカルチャライズについても、必要とされる範囲は小さくなく、場合によっては少し手をいれるのではなく、かなり作り直す覚悟も必要です。そしてPublishingの環境も大きく異なることから、適切なローカルパートナーが求められます。
その中で、今回のD2Cさんのお取組みは、上海最大のメディアグループとの提携というかたちを作られることで、中国でのスムースなPublishing、運用、そしてプロモーションを一本の線で結ぶ強固な日中の架け橋になると確信しています。
実は私はこのプロジェクトへのアドバイザーについて当社に打診を頂いた際、ほぼ即答で本件に関与させていただきたい旨を申し上げました。中国の国営企業と、NTTドコモ・電通グループの共同出資であるD2Cさんという存在による日中の架け橋は、今の日中関係の中、中国のデジタルコンテンツ市場の拡大をチャンスとする日本企業のためにも、その存在意義は極めて強いものになると感じたためです。ある意味で、会社としての利益という視点ではない、さらに高い意義を、直感的に意識しました。
日本と中華圏のデジタルコンテンツ領域について、両方の事業環境に根差したアドバイスできる存在は、双方の市場規模に比して、残念ながら多くはありません。いらっしゃる場合でも、日中どちらかの企業の現地法人やパートナーとしての存在であるケースが多いのもまた現実です(自社の案件だと、どうしても俯瞰的な視点がとりにくい)。私自身、今回のプロジェクトに責任者として関与させていただいた中で、クララオンラインが日本-中華圏のデジタル市場における経営戦略・財務・契約内容・コミュニケーションなど総合的なアドバイザリーを提供できる「頼っていただける存在」になるために、引き続き一件一件のプロジェクトに真剣に向きあっていく気持ちを新たにしたところです。