クララ 中国

中国でのクラウドがニフティさんとの共同事業になった背景

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先々週の話で恐縮ですが、中国のクラウドサービス「鴻図雲」(ホンツーユン)をニフティさんとの共同事業とする旨を発表しました。その内容はプレスリリースをぜひご覧いただくとして、blogでは少しその背景を書き残しておくことにします。

 

2012年にはじまった両社の交流

最初にニフティさんとの接点があったのは2011年。これより前のクララオンラインの戦略は、特に決めていたわけではないものの、お客様に提供するIaaSは自社サービスのみというある種のこだわりがありました。サーバホスティングをずっとやってきた中で、その他の可能性を検討することは自然と少なかったように思います。

あるきっかけでお声がけいただいたあと様々な協業検討を両社で行いましたが、早い時点で「中国展開」という点に絞り込まれていました。実情を見ていただくべく中国にも来ていただきましたが、おりしもその前後に中国全土でのデモも。一部にある反日感情を露にした中国を見て頂くことになりましたが、日本での報道とを見比べて頂くことになり、結果としては良かったのではないかと考えています。その後、2013年にはニフティクラウドの基盤について技術提供を受け、当社のクラウドサービスとして「鴻図雲」(ホンツーユン)を中国でリリースし、日系・中国系のお客様にご利用いただきはじめることになりました。

 

両社が持つ日中のシナジー

ニフティさんは、ニフティクラウドの日本における十分な実績については言うまでもなく、また国内勢のパブリッククラウド市場で高いシェアをお持ちです。一方のクララオンラインは、中国を含むアジアでの事業経験、中国での電信サービスに関わる経営許可、中国のバックボーンネットワークに関わる経験などを持っており、拡がる中国のクラウド市場に向けて両社の協力関係は実現性が高いと私も判断しました。

もう一つ、当社はパブリッククラウド市場にはそもそも参入していなかったという背景も一つあります。少しだけ振り返ると、クララは共用サーバ→専用サーバ→VPSという順にサーバホスティング事業を展開してきましたが、早々にパブリッククラウドの市場には出ないという判断をし、クラウドという範囲でいけばプライベートクラウドと当時呼ばれていた領域に特化していました。仮にパブリッククラウド市場に当社もうってでていたら、冒頭に書いた両社の協業検討はそもそもおきえなかったかもしれません。また、今でこそ当社は様々なクラウドサービスの運用を行うことを事業の一つの軸に置いていますが、一つの事業(この場合、サービスより広い範囲)をビジネスパートナーと連携して進めるということはまだまだ我々に経験値が足りていませんでした。逆にニフティさんには様々なパートナーと組むという力と経験が既におありであり、我々もそこから多くのことを学ばせて頂きました。

 

加速する中国のクラウド市場

検討を始めた時点では中国のパブリッククラウド市場はまだヨチヨチ歩きでした。しかし、急速に立ち上がり、筋肉をつけ、ある面では既に日本は抜き去られた感があります。アリババのグループである「阿里雲(Aliyun)」は一気に市場最強のプレイヤーに成長しました。中国の電信市場は外資による直接提供は認められていないため、スキーム作りも複雑です。2012年から現在までの間には、外資ではMicrosoft AzureやAmazon Web Services(AWS)も中国での展開を発表しました。Microsoftは従前から中央や地方政府との関係も良好であるといわれていますが、Azureに関するスキームも中国政府に刺激を与えない方法をとっているように見えます。

いずれにしても、中国という巨大インターネット市場が急速に拡大する中、爆発的にクラウドサービスの市場が大きくなることは、この10年中国のインターネット事業に関わっている身として強く感じていました。そのため、何が何でも早くサービスをはじめ、そして早く広める必要性があると強く思い続けてきたわけです。ただ、まだ中国のパブリッククラウド市場は欧米・日本ほどの仕上がり感は見せていません。あまりにもAliyunだけの出来上がりが大きいせいもあるでしょう。依然としてインターネットデータセンタ(IDC)のニーズは強いものの、この裏側は物理的なサーバのコロケーションニーズに引っ張られています。これはいずれ、かなりの割合がパブリッククラウドに移行すると見ています。

 

中国という「大きなケーキ」

ただ、中国という「ケーキ」は、あまりにも大きいのです。市場のシェアとはそのケーキをどのように各社が分けたかですが、日本では数パーセントのシェアでは勝てたとはいえないものの、中国はそもそもケーキのサイズが大きいので、小さく見えるシェアでも十分な利益があがります。むしろ一人勝ちもできないようになっています。私たちは冷静に、このケーキのまず一つのカットを取りにきたのです。

もう一つ別のたとえをしてみましょう。なんといっても中国の大地は広いですから、土に水を撒こうとすれば水はたくさん必要です。またとても一人で水を撒ききることはできません。いつも中国で日本企業を見ていて感じていますが、水を中国全土で少しだけ撒くような中途半端なことをするぐらいならば、どこか1都市、2都市ぐらいに絞って集中的に撒くべきです。今回ニフティさんに鴻図雲(ホンツーユン)を共同事業としていただくことにより、一緒にこれから北京や大連など北側から水を撒き、先に私たちが植えておいた種を育て、そして花をさかせるつもりです。花が咲くまでに必要な太陽の光となる市場ニーズは十分にここにあります。

北京にて。

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