2013年にパブリックコメントが募集されていた中国の電信業務分類目録の改正が、いよいよ間近に迫っていそうです。この改正により、従来は具体的に定義されていなかったクラウドサービス分野が分類され、クラウドサービスを提供する際に必要な経営許可範囲が明確化されるとみられます。
電信業務分類目録とは
中国においては、電信条例が日本の電気通信事業法に相当し、電気通信事業について定めています。さらに、日本の電気通信事業法施行規則第4条第3項第2号に規定される「電気通信役務」の一覧に相当するものとして、電信業務分類目録が存在し、ここでは中国がどのようなサービスを電気通信事業として定義しているかを具体的に確認することができます。外資の視点からすれば、「どのようなサービスを提供する場合には電信業務経営許可を持たねばならないのか」「この場合、電信業務経営許可のうち、いずれの経営許可範囲に含まれるものなのか」という点を確認することができるといえます。
電信業務分類目録の改正について
この電信業務分類目録は2003年に公布されたものが本日時点では有効ですが、2013年5月には以下のURLに記載されているとおり工業情報化部からパブリックコメントが募集されており、その改正内容の方向性が公表されていました。一般的に中国におけるパブリックコメントとは、電信業務に関わらず改正前の比較的近い時点で公表され、これがそのまま公布されることが多くみられます。しかしこの分類目録については2年間にわたって「放置」されている状況でした。
2年の期間を既に経ている背景には、私が知りうる限りこれらが電気通信事業における規制強化の可能性と写った外国政府からの意見もあったほか、上海をはじめとした自由貿易試験区において一部業務の外資への開放を進める政策とのバランスもあったと考えられます。
「クラウドサービス」の明確化
パブリックコメントの内容(以下「2013年版」)について詳細な分析は本稿では避けますが、2003年当時には存在していなかったインターネットサービスについて細かく分類をする姿勢がみられると同時に、最も着目すべき点はクラウドサービスについて一分類を設けている点が挙げられます。従前はインターネットデータセンタ事業(互联网数据中心业务)、インターネット接続サービス事業(互联网接入服务业务)、通信サービス業務(信息服务业务)の3点の経営許可範囲を持っていることがIaaS型クラウドサービスを提供する上での要件とされる行政判断が多くみられましたが(これでも時期により通信管理局の判断には相当なばらつきがあることを私自身も確認しています)、この分類を整理してきています。
具体的には、2013年版では新たに「互联网资源协作服务业务」(インターネットリソース協同サービス業務, もう少し意訳するとインターネットリソース共有サービス業務でしょうか。)という項目が作られており、ここではクラウドサービスを指すと考えられる以下の文言が追加されています。
B12 互联网资源协作服务业务
互联网资源协作业务是指利用架设在数据中心之上的设备和资源,通过互联网或其他网络以随时获取、按需使用、随时扩展、协作共享等方式,为用户提供的包括但不限于数据存储、互联网应用开发环境、互联网应用部署和运行管理等服务。
2013年版が公布され、その際にパブリックコメントに含まれるこれらの追加が行われた場合、今後新たにクラウドサービスを提供する事業者は増値電信業務経営許可の経営範囲の中に「互联网资源协作服务业务」を含むことが求められる可能性があります。しかし、以下の点に注意が必要だと考えています。
- このクラウドサービスの概念がいわゆるIaaSなのか、SaaS、PaaSを含むものなのかについてはこの電信業務分類目録からだけでは明確ではない点。
- サーバホスティングサービス、特にVPSサービスのようにサーバを仮想化して提供している分野をクラウドサービスの範囲に含めるのかどうかについては現時点では何ら明確な解釈は無い点。
- 既にクラウドサービスを提供しており、かつ増値電信業務経営許可を有している事業者に対して、新たにこれらの経営範囲を追加することが求められるのか否かは不明確である点。(電信業務経営許可の経緯を含めた多くの経営許可においては、過去に許可されている事業者については言及されず、そのままとなるケースが多く見られます。)
まとめ
現時点では「電子業務分類目録が改正される」との点は私個人の憶測の一つでしかありません。しかし、少なくともこれらの領域について工業情報化部が比較的重視しながら政策を推し進めていることについては、パブリックコメントが出る前に公表されていた以下のような通達等から見てとれます。
またこれ以外にも、自由貿易試験区での一部業務の外資開放などもある一方、法令と実務が乖離している点を調整しようとする流れは規制強化と受け止められる点もあり、引き続き注視する必要があります。