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拠点間の電話の内線化
クララオンラインは、日本(東京・名古屋)と中国のオフィスの電話を内線化しています。これは大企業などでは比較的よくみられますが、中規模の企業では未だに国際電話やSkype などで通話しているケースをよくみます。最近はV-Cubeなどのクラウド型会議システムも出てきていますが、日々の業務での電話は依然として電話は手放せません。
ここでは、クララオンラインが内線化した背景と、内線化した際のメリットについて自社の事例を整理した上で、海外に拠点を持つ企業へのおすすめのソリューションとして紹介したいと思います。
従来のコミュニケーション
クララが海外展開を始めたのは2004年。最初は台湾への展開で、台南という台湾の南にある都市に3人のスタッフがいるところから歴史が始まります。その後2006年に大連駐在員事務所を立ち上げ、その年の終わりにシンガポールでUsonyxというサーバホスティング会社を買収しました。
台湾に展開した当初の音声コミュニケーションはSkype で、PCとヘッドセットで会話というのが大半でした。著しく不便なわけではないものの、電話と違って「相手が着席していること」の確認は必要ですし、不在の場合にはタイミングの調整が必要です。大連も同様でしたが、当時の日中間のインターネット品質は今よりもさらに貧弱で、ほぼ使い物にならなかったと記憶しています。
その後、(記憶が正確ではありませんが)2007年か2008年頃にはシンガポールと東京との間を内線化しました。当時はCisco のISRを使った構成で、東京・名古屋・シンガポールの内線化を実現しました。(この時の構成はCiscoのプレスリリースに残っています)
構成を見ていただくとお分かり頂けるとおり、これはインターネット上にVPNトンネルを張る構成のため、一定程度のインターネットの通信品質が求められます。一方、2011年に北京に進出して以来何度もこの構成を検討しましたが、やはりインターネット越しに音声を安定させることはなかなか難しく、断念していました。
携帯電話同士の通話
日本でもビジネスコミュニケーションに携帯電話が使われることがすすんだ一方、中国では日本よりもさらにビジネスコミュニケーションでの携帯電話の比率は高いという事実があります。便利なのは便利なのですが、日本と中国のスタッフの間のコミュニケーションが携帯電話で進むと自ずと上がるのは国際通話の料金・・・。+86/+81をつければというのはお互い大変便利なものの、高いときには一人月額5~10万円ぐらいの通話料を払っているケースもありました。(最初はビビリましたが、そのうち慣れちゃいました。業務だから仕方がないという割り切り。とはいえ。。)
アプリを入れたIP電話なども試しましたが、通話の安定性の問題と、そもそもパッと通話の習慣が切り替わるかというと難しく、結局社内では普及しませんでした。(今ではWhatsAppなどありますが、それでもなかなか安定しません)
まずはIP-PBXのデータセンタへの移設
ここからは試行錯誤の連続で時間がかかりました。まずは、もともと東京本社の社内ラックにおいてあったIP-PBXを、データセンタに全て移設しました。その下にインターネット越しで東京・名古屋のオフィスの電話網がぶら下がるかたちです。東京のオフィスとデータセンタ間は2経路に分け、建物への入線の経路も分離するため異なる足回りを使っています。
したがって、いわゆるNTTの電話線は東京のオフィスには引き込んでいません(唯一あるのはファックス用の回線と、災害用の回線)。地味に将来に効くのは、この先移転するときにも電話の設備の移転が簡単という点。まだそのメリットは享受していませんが...。いずれね。
日中間の通信の改善
次に、日中の拠点間の通信を改善するために、中国電信の国際インターネット網であるCN2(AS4809)とクララオンラインのバックボーン(AS23661)を接続しました。この経路にVPNを張ることによって、北京のオフィスと東京のオフィスの間でファイルサーバの共有などを実現しました。
何も考えずにインターネット越しにトンネルを張ると経路やスループットを安定させられないのと同時に、専用線やIP-VPNを契約するとそこそこお金がはるので現実的ではありません。CN2経由にすることにより、インターネットという性格上ベストエフォートではあるものの、かなり安定します。インターネットの会社ですからベストエフォートという点への理解は十分にあるので、これは比較的容易に導入できました。
ところで、ここで出てきたのはセキュリティの問題です。日本法人と中国法人では、法令も違えば、セキュリティに対する教育の前提も違います。ネットワーク的に必要なセキュリティ対策は施した上で、中国側でも日本のISMSに準じた教育をするという取り組みを進めました。
音声を乗せる
しばらくはファイルのやり取りだけに使っていたところ、日中間のコミュニケーションを円滑にしたいという思いも増えてきました。この頃は、また日中間でSkype がまた多く使われていましたが、プチプチ切れてしまうのでミーティングにならないことも少なくありません。ストレスも大きければ、切れてしまうとそのまま片側で会議が進んでしまい、結果として情報共有が出来ないという二重のロスが発生します。
そこで、日本のIP-PBXの下に上記のCN2を経由するトンネル越しで音声を乗せる判断をしました。中国のオフィスには日本と同じ電話機を設置することで、内線化を実現しました。なお、今はリプレイスに伴ってNEC製のIP-PBXを採用しています。
オフィス間のやり取りがとてもスムースに!
結果には相当満足しています。それぞれの拠点の社員同士のやり取りが圧倒的に増えました。正確な数は計測していませんが、恐らく1日あたり数十本ぐらいの頻度で使われていると思います。
音声の品質は、中国側の事情で夕方になると悪くなる(スループットが落ちてしまうため)状況もありましたが、これも北京オフィスのISPと契約を変更して対処しました。
Skypeでも会話はできてたんじゃないのと思うのですが、この結果から見ると、インフラは「使うことに何らハードルを感じないレベルまで落とし込むと、自然と皆が使うようになる」という事実がわかります。離れた拠点同士の社員のコミュニケーションはどうしても疎遠になりがちなところ、声を聴くだけで一気に近づきます。
このような企業におすすめ
日本と中国の業務の連携性が高く、頻繁にコミュニケーションをとっており、かつ両方の拠点に一定の人数以上の社員がいるというのであれば、このソリューションは検討すべきです(断言)。
導入までに必要な期間は、既に日本国内でIP-PBXを導入している企業であれば設計や回線手配などを含めると最短で3か月をみればよいでしょう。中国側でこれに接続できる電話機の手配可否などを確認した上で、中国拠点のインターネット回線の品質などを調査し、必要であればISPを変えるか、ISPとの契約を変えるなどのことも考えられます。
このためだけの固定費は決して高くないですし、なにより業務がスムースに進むので効率が上がります。自社で実際に取り組んだ事例なので自信をもってすすめられます。