スマホの中にあるメモを振り返ると、色々な過去が出てきます。一行だけ書いてあって自分でも意味がわからないもの、感情をぶつけていたもの、誰かから良い話を聞いてそれを書き留めようとしたんだろうこと。
スマホのメモ帳に残る記録
2018年11月には、「サドルの色」というのがありました。チャリチャリ、当時のメルチャリのサドルの色の話です。まだ経営を引き継ぐより前のタイミングでしたが当初つかっていたサドルは中のクッションの上に布を貼り付けているタイプで、接着剤がはがれると布がめくれてきていました。それが嫌で新しいサドルを探してみたいなと思っていたんですね。ただ、同じような色がなかなか見つからず、という時期でした。
その年の12月には、有明、秋葉原、大宮とあります。バイチャリの話です。大宮は改装、有明と秋葉原の出店時期を決めていたときでした。ちなみに大宮は改装のタイミングでわずかな期間だけ1階を電動アシスト専門の別ブランドのお店、2階をバイチャリとしたのですが大変うまくいかず、結局1階をバイチャリに戻しました。その後、大宮店は大変頑張ってくれているお店の一つです。秋葉原は2019年12月、有明は2020年7月に開店しましたが、このタイミングで既に出店計画を決めていたわけです。
メモは、良いこともそうでないことも思い出させてくれます。思い出すことによって振り返るから成長できるんだとおもって見つめるようにします。上に出てきた大宮の話し、これは大宮店の1階を電動アシスト向けの別ブランドにしていたことがあるという、私の中でかなり反省しているプロジェクトの一つです。もともとバイチャリとして1階から3階まで小さなビルを全部借りていて、そこに本部機能と倉庫がありました(今は1階が店舗です)。バイチャリの経営に参画した私は「新しいことをしよう」と、電動アシスト専門のリユースのお店を別ブランドで立ち上げようと考え、それを大宮店の1階と決めました。ところが、うまくいきませんでした。
バイチャリはリユース専門ですからお買い取りがしっかりないと販売できる自転車が揃いません。ところが電動アシストのお買い取りはなかなか当時は難しく、目論んだとおりにはいきませんでした。選んでいただけるだけの自転車の台数、種類が必要です。選択肢が少ないとお客さまにとってご予算、カラー、デザインなどでのご希望がマッチしにくく、なんらリユースの価値が際立ちません。ちょうどお店の目の前に区役所が移転してこられ、周辺にタワーマンションがどんどんできて、眼の前の道路は自転車専用レーンができて走りやすくなり、と、これは家族連れも増えるだろうからきっと需要がある、と思ったのですが、私が根本の部分を見誤っていました。結局、バイチャリとして再度のリニューアルを行い、別ブランドの展開は撤退しました。
2019年6月3日には、「neuet株式会社、全部小文字、ドメイン抑える」などがあります。当時、いまのチャリチャリの事業を分社化して新しい会社にするというとき、その社名を決めた時のメモです。これはnew venation、つまり新たな葉脈からの造語です。都市の葉脈のような存在で移動を支えたい、という話しをしながらでてきた社名の案でした。wではなくuになった理由まで思い出しきれないのですが、ドイツ語のneu(英語のnew)にもかかるという話しをした記憶があります。あの当時はクララのオフィスの一つが神谷町にあり、そのオフィスの近くにあったカフェで決めたのです。
2020年頃になるとチャリチャリの資本政策の話が出てきます。私はよく150年ほど前の日本の鉄道史を持ち出して「地域の資本で新しい移動をつくったことになぞらえてるんです」と話すことがあります。このとき、その歴史が事実なのかの調べ物をしてた様子があります。メモには博多湾鉄道だとか書いてあります。
日記とフライトログ
スマホのメモは出先での気づき、記憶のため。日記は手書きです。数行書く程度。書くのを忘れてしまったら迷わず諦めるのでまとめ書きはしません。毎日書こうとすると追われてしまうので、義務的に感じそうなことはしないようにしています。そもそもズボラだし。
一方で、好きなことはやり続けられるということの証拠もあります。フライトログです。専用のログブックで記録される方も多いですが、私はツバメノートの1ページずつが1フライト。ツバメノートを選んでいるのは「好き」だからです。
このフライトログには、航空券の控え、バゲッジタグ、搭乗案内などを全てスクラップ帳のように貼り付け、さらに機内でメモしたブロックアウト(飛行機が動き出しはじめるとき, B/O)、離陸、着陸、ブロックイン(B/I)などと、機材、レジなどを全部メモしています。使用滑走路、巡航高度、速度なども。スマホのメモでぴぴっと全部記録して、あとでノートに転記しています。Flightradar24などでのデータもあるのですが、B/OやB/Iなどは手元で見ていないと分からないので自分でメモしているのが確実です。客室乗務員さんのお手間をわずらわせたくはないのですが、風向きなどで今日はフライトが長くなりそうだなという場合にはハガキなどに搭乗証明を書いていただき一緒に綴じ、記念にすることもあります。
何にログを使うのかと言われても大してありません。あのときこんな仕事のときにこんなフライトに乗ったなあとか、ああこの機材は生涯で◯回目だ、とか、あれ今年はRWY04で降りてきたのは初めてだったなとか、自分以外の誰にも興味はもたれないだろう記録です。言い換えれば自己満足です。それでいいんです。会社のメンバーに見せたことがあるのも家人に見せたことがあるのも過去、数回ずつぐらいです。存在を知らせるためにつくっているわけでもなく、単にそれを書いている時間が楽しいし、飛行機が好きだからです。
紙が増えるのはエコな環境とは真逆ですが、一つひとつが自分の中での記念です。記念にしたいので、可能なかぎり紙の搭乗券の発券をお願いしています。ごくたまーーに、フライト前に既に眠すぎて、シートに座ったらそのまま寝てしまい気づいたら上空ということはあります。そういうときは無理に全部穴埋めしようとはしません。寝落ちしたのもまた思い出。
ところで、このフライトログ、自分でも驚くほど途切れてないのです。細かいことが得意ではない性格の自分が、それでもずっと続けられています。私の身近な人には一緒にいてわずかな時間だけで気づかれるほどほとんどのことは適当な性格だし、領収書はどこのポケットにいったかわからなくなるし、ファイル名の付け方もざっくりなのでいつもどれが最新か分からなくなるし、という人間なのに、フライトログはバッチリなのです。
なぜできるのか。答えは、これが好きだということと、自分のペースを保つためのルーティンだという2つです。好きだけでも続かないことはたくさんあります。さらに探ってみると、自分の「歩幅」を保つためのリズムをこのフライトログでつくっている気がします。
ともすると気づかないうちに呼吸がちょっと浅くなったり早くなってしまいそうな世の中。そんなときにスマホのメモ、日記、何かの行動のログといったもので自分の行動やその時の考えを振り返ってみることで、自然に好きなことに向き合ってみて、好きなものを眺めながら肩の力を抜いてみて、自分の一番心地よい呼吸のペースを保ってみる、という方法の一つです。ご参考になれば。