勝ち目のない競争に突っ込んできていないか
中国のシェアバイク(自転車のシェアリング)は完全に混沌としてきました。Mobikeは2000万利用/日を突破、その少し前にはofoが1000万利用/日を突破、という、頭がクラクラするような数をさっさとクリアしてきています。
最初に少しだけ冷静に考えてください。人口が多いから利用数が多い、とはあながち言えません。10:1ぐらいの人口比として日本での様子が想像できるかといえば、日本で1日にシェアバイクが100万利用される姿は到底想像できません。この1年で中国の移動習慣が明らかに変化してきたのです。急速に。劇的に。写真ではどうやっても伝わらないぐらい。
一方でそんな資本力勝負の市場に未だに新しいプレイヤーが毎月参戦してくるという、「さぁ君はどのような勝ち目をもって参入してきたんだ」と聞いてみたいぐらいのわけのわからない状況です。そろそろ自転車のカラーバリュエーションが会社間で被り始めてる気もします。黄緑とか!黄緑とか!!
MobikeとOfoに絞られるのではないか
さて、ここにきての私の疑問は、MobikeとOfo以外に誰に勝ち目があるのかということです。この1ヶ月弱の間でも北京の街の中には「Unibike」「U-bicycle」など3社の自転車が出てきました。
概ね全国で3番手に位置しているとみられるbluegogoは、少し前から「bluegogo pro」という、何がproだかは正直何もわからない自転車もばら撒き始めています。Ofoの最新型とほぼ同じ印象だけど、デザインが好きなので許す!
先月、決済と利用を一本にする仕組みが2社から立て続けに発表され、「アリババ一派とOfo」、「Tencent一派とMobike」という組み方になった時点でほぼ固まったと思います。もちろんここまできたとしてもタクシー予約アプリのように「最後は一つ」という固め方もあるので油断はできません。(ちなみにbluegogoやU-bicycleなどもアリババ側に)
3位以下はどうなるのか
北京は北京、上海は上海なので、もはやここまで来るとプレイヤーの話は一まとめにはし難いものの、中国全体でみるとMobike、Ofoは勝ち抜けられる位置まできました。そこにさぁ次点で誰かが残れるのかというと3番手ぐらいまではありうるでしょうが、上にあげたUnibike、U-bicycleなどのような新興プレイヤーの勝ち目はどう考えても見えないのです。押金、つまり保証金を無料にするといったことではユーザはなびかないし、価格設定も既にギリギリのところ。もはや競争するポイントが無いわけです。さらに2番手と3番手の差も大きく開いています。
一方、「ユーザを囲うだけ囲って、マネタイズする手前で他社へ売却」というシナリオが当てはまるかどうかも考えてみる必要があります。ここで考えるべきは、ユーザの利用実態です。様子をみていると MobikeかOfoだけ、もしくはMobikeとOfoだけという人は結構いますが、例えばbluegogoだけという人はほぼ見かけません。あくまで3番手以下は(目の前にそれしか自転車がないときの)予備的位置づけ、またはあればそっちに乗るという好みでしかなく、MobikeかOfoのアカウントも持っていた上でbluegogoも乗ってる、とみられます。
とすると、こうした3番手以下の企業を上位が買い取る必要性は積極的には考えにくく、むしろ「他社に取られないために買う」意義があるかないか、というぐらいではないでしょうか。しかも一度ばら撒かれた自転車を回収する意思があるとも考えられません。ブランドを統一するコストを考えれば、買った会社の自転車はそのまま放置したほうがきっと安いでしょう。
今後の予想
ということで私の勝手な予想では、あと数ヶ月で倒れ始める会社が出始め、今年の年末には潰れた会社の自転車は野ざらしになり、勝手に使われ、一方でユーザのエンゲージメントに成功しマネタイズしきれるのは2社、とよみます。個人的にはOfoの乗り心地、そしてサドルの高さを変えられるのが大変好きなのですが、アプリの出来具合は明らかにMobikeが上。頑張れOfoであります。
一帯一路の大きな会議が間もなく開かれる北京。各国首脳などが泊まるホテルはセキュリティの準備がされつつあります。まさか街の中から自転車をきれいに撤去できるわけはなく(それでも会場周辺はきれいにするのでしょう)、どこかの首脳が見て「あれ何。これうちの国でもできる? 」みたいなノリもあるんではないかと前向きに期待してみたり。